「皆様に、少しでも雨麗様のお気持ちが伝わっていたら嬉しいのですが」
「……何言ってんすか、小豆さん。
俺らははじめから──仕えるためにここに来てんすよ」
言えば、小豆さんは珍しくきょとんとして。
それからくすくすと笑うと、「そうですか」と一言。……そうですか、ってすげえ素っ気ないな。
「雨麗様にもそう伝えてあげてください。
……きっと、とても喜ばれると思いますから」
「シュウくん、別邸もどるよー?
早くしないとぼくたち先行っちゃうよー?」
声を掛けられて、「すぐ行く」と返す。
小豆さんに「おやすみなさい」と言われてからその場をあとにすると、芙夏がなに話してたのー?と聞いてきた。
……お前さっきまで泣きかけだったじゃねーか。
なんで今は元気なんだよ、と訝しげな表情をしたのがバレたらしい。嫌そうな顔しないで、と腕に絡みついてくるから引き剥がした。
「お前はスキンシップ多いんだよ」
「え、だめなの?」
「……むしろいいと思ってんのか」
引っ付くなら女にしろよ、と言えば「レイちゃんしかいないもん」と拗ねる芙夏。
それにより雪深が「お嬢に引っ付くな」なんて言い出す。お嬢はお前の所有物じゃねーだろ。
その物言いが気に入らなかったのか胡粋が「雪深のじゃないでしょ」とさらに混ざるせいで、騒ぎすぎてうるせえ。
「誘拐されてんのにお前ら呑気だな」とボソッと零せばさすがに気まずかったのか口を閉ざす三人。どいつもこいつも似たもの同士だ。
「さっさと風呂はいって部屋でお嬢に電話しよ~。
俺先に風呂入っていい?入るよ?」
「勝手にしろっての」



