彼女の無事を確認したら逆に気が抜けたのか、彼女の言う通りもう既に泣きそうになっている芙夏が嫌がる。

それでも考えは揺らがないようで、画面越しの彼女は首を横に振った。



『ごめんね、帰れないの。

……だから、こっちにいらっしゃい』



「っ、雨麗様……!

どうして皆様を呼び出されるんですか……!」



『小豆、あなたさっきから小姑みたいでうるさいわよ。

……どうしてって、さみしくて不安がってる犬は問答無用で抱きしめるでしょう?それと同じじゃない』



「あなたって人は……」



……小豆さん苦労してんだな。

こんなぶっ飛んでる主人に仕えたたら、そりゃあ小豆さんのネジも色々外れるわ、と心の中で同情する。



深くため息をついて項垂れている小豆さんはさておき、彼女は本気で俺らを呼び出す気でいるらしい。

明日の朝でいい?と尋ねてくる姿は至って本気だ。本気すぎて引くわ。




「行くのって今からじゃねえの?」



「なんでお前は行く気なんだよ」



「……? 柊季は行かねーの?」



「真面目な顔でたまに天然発揮されると凄まじくうざいな」



お前ただ単に彼女に会いたいだけだろ。行く必要ねーだろ。

んな無垢なポメラニアンみたいな顔で「え、行ったらだめなの?」なんて言われても困る。ここに女なんかいねーんだから、女受けのいい顔すんなっての。



『明日の朝で構わないからいらっしゃい。

さみしいならあとで直説電話してあげるから』



「やばい、お嬢すげえ好き……」