「買収って……なん、の?

っていうか、なにを……買収したの?」



『だから、この子たちを買収したのよ。

プロの殺し屋らしいけど依頼主から先払いでもらってるお金をわたしが受け取って、それ以上の額をわたしが支払ったの』



「……金で取引したんだ」



『元々依頼主に殺せって頼まれてたわけじゃないようだから、金額が少なくて済んだわ。

その代わりこの子たちは依頼されなきゃお金も受け取らないから、その内容で少し揉めたのよ』



「……雨麗様。

お願いですから勝手なことはなさらないでくださいとあれほど、」



『今後わたしが御陵を継いだ場合、殺し屋を使う案件はあなた達のことを使うと取引しただけよ?

大金よりも信頼が勝る時だってあるの』



「私はそういうことを言ってるわけじゃありません。

あまりにも無茶をされるので怒ってるんです」




小豆さんがお嬢を叱るけど。

本人はまったく気にしていないようで、「いいじゃない」なんて言ってる。もちろん彼女が無事であることをはやく確認できたのは事実なようで、叱り切れないでいるようだけど。



『でもまあ……

本当ならこんな形じゃなくてもよかったのよ』



「それなら、」



『……わたしのかわいい番犬たちが、不安がってると思って。

芙夏はもう既に泣きそうな顔してるじゃない』



こんな時でも、彼女の優先順位は自分の身の安全でもなければ今後の御陵のことでもない。

何よりも俺らを優先してくれると、この日記を読んでから、改めて気づいた。そのせいで余計に、息苦しくなる。



『……残念だけど、わたしはこの子たちを依頼した相手と直接話を付けなきゃいけないからまだ帰れないの。

相手はわたしをここに監禁させて、明日様子を見に来る予定だったらしいのよ』



「ぼく、やだよ……

レイちゃん、はやく帰ってきて」