「失礼致します……!

皆様、雨麗様と連絡が取れました……!」



ばたばたと慌ただしくなった部屋の外。

伝えられたそれに、はっとして広間に引き返す。──手にはしっかりと、彼女の記憶と想いが込められた手帳を抱いたまま。



「小豆さん、レイと連絡取れたんですか!?」



使われていた怪しげな機材の山は、壁の方に追いやられて。

どこから運び込まれたのやら、大きな液晶テレビが一台置かれている。そこにはどこかの倉庫のような映像が映っていて、映像の中心にいる彼女は、パイプ椅子に腰掛けて優雅に珈琲を飲んでいた。



……いや、どっからつっこめばいいんだ、この絵面。

そこにいる顔を隠した男たちは?と頭の中でふつふつと考える。誘拐されたっていうのに、拘束されている訳でもないし危険そうなイメージはない。



『あ、みんな来てくれたの?

よかった。せっかく映像で送ったのに、五家だけいなくてわたしのこと嫌いなのかと思っちゃった』



ちら、と顔をあげればテレビの上には小型のカメラ。

どうやらそれで映像を向こうに送り、テレビ電話にしているらしい。……じゃねーよ。




「お嬢、だいじょうぶ……?

なんかされてない?怖くない?平気?」



『雪深、大丈夫だから落ち着きなさい。

もし大丈夫じゃなかったら今頃電話なんて掛けてないわよ』



「そうなんだけどさ……まだそこにいるじゃん」



『ああ、この子たちのこと?

後で手を貸してもらわなきゃいけないから待機させてるだけよ。……混乱させてごめんなさいね。取引に随分と時間かかっちゃって』



取引……?何の?と疑問が浮かぶ。

そんな俺らの表情を汲んだようで、彼女はコンビニで買ったであろう珈琲を一口飲んで、「あのね」と笑ってみせる。



『買収したの』



……は?