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「おはようございます、雨麗様。
起床の時刻ですよ。起きてください」
「……目は覚ましてる」
「へ理屈がお好きですね。
……さては、昨日私がいなかったのを良いことに、夜更かしされてたんじゃないですか?」
「してない……
ケーキ食べてちょっと話して、わたしは先に部屋に戻ってきたもの」
「部屋で何時まで何なさってたんです?雨麗様」
朝から安定の威圧感。
主人はどっちだ、と言いたくなるけれど彼が間違ったことを言っているわけではないので、しぶしぶ身体を起こす。変な体勢で寝たのか首が痛い。
眩しい朝の光に目を細めながら、渡された制服を手に取る。
遠慮なしに浴衣を解いて彼の前で着替え始めるが、これはいつものことであって男女間の恥じらいとかそんなもの、わたしと小豆の間にはない。
「途中でやめたから、
日付変わる頃には布団の中にいたわよ」
「……その割には疲れた顔をされていませんか?」
「……昨日寝る前に憩のこと考えてたからじゃないの」
雛乃ちゃんたちと仲が良いだけあって、小豆も当然わたしと憩の関係を知っている。
少し前にぼそりと別れたことを言っておいたから、その関係が既に破綻していることも。
「……雨麗様も大抵物好きですよね。
むしろ、よくあんな方と三年も続いたものですよ」
「……うるさい」
どう足掻いたって、好きなものは好きなのだ。
「小豆も早く彼女作れば良いのに」なんて思ってもないことを言ってみれば、「パワハラですよ」と返された。笑ってるくせに生意気な。



