「それは出来ないわ」

私も厳しい声を出す。


「私は日向に『推し』を教わって、生きがいが出来たの。日向のおかげで今があるの」

「……だから何?」

香奈子が突っかかってくる。


私も負けない。
「日向の人生は長いのよ!香奈子、あなたよりもずっと!」
思ったより、大きな声が出た。

美加子も慌ててやってくる。
「母さん?香奈子?」



構わず私は続けた。

「どういう意味なのか、香奈子も日向も分かるでしょう!ずっと香奈子がそばにいても、限界があるのよ!」


日向は絶望的な瞳で、私を見ている。



「家の中での楽しみを知っている日向に、今度は外の世界の楽しいことを知ってほしいの。怖いことだけじゃないって、知ってほしいのよ!」


香奈子は日向の頭を撫でながら、怒りの目を私に向ける。

「そんなの、笑子ばあちゃんの自己満足じゃない!?それに今、無理矢理に外に出して、日向がこれ以上怖い思いをしたら、笑子ばあちゃんはどう責任をとるのよ!!」