ファンレター。
葉書にすらすら書けたわ。
入院中に書いたファンレターは、かなりの大作だったけれど。
今度は葉書1枚に想いをのせた。
翌朝。
「郵便ポストに投函しなくちゃね」
葉書を見つめていると、ある考えが浮かんだ。
「日向」
私は、日向の部屋のドアをノックする。
日向は顔を見せてくれた。
朝の7時半。
まだ部屋の中で朝ごはんを食べていたらしく、口がもごもご動いている。
「おばあちゃんと一緒に、これを郵便ポストまで投函しに行かない?」
その提案に。
日向の顔が一気に曇る。
1番近い郵便ポストは、徒歩6分くらいの場所にある。
ちっとも外に出ていない日向にとって、それは大冒険だろう。
だけど。
私は日向に、勇気を出してほしかった。
いつだったか、私の部屋に来てくれた時みたいに。
リビングで、家族みんなで夕食を食べた時みたいに。
「いやっ……!」
日向は部屋のドアにしがみつく。
「怖いもん……!」
涙を流している。
香奈子がリビングからかけ寄ってきた。
「何なの!?」
「日向に外に出るように言っただけよ」
私はわざと、何でもないふうに説明した。
「もう!この間から何なの!!日向のこと、こんなに怖がらせて!!笑子ばあちゃんはもう、日向に近づかないでよ!!」
香奈子が日向を抱きしめながら、私を振り返って睨む。