夏が終わった。
そう感じたのは、病院の帰り道。
セミの鳴き声がいつの間にか聞こえてこなくなったから。
空を見上げたら、お日様の光も柔らかく感じたから。
「秋がきたのね」
私はひとり、呟く。
夏が特別好きなわけではないけれど。
夏が去ったあとは、寂しくなる。
足腰が痛くて。
私は近くの公園のベンチに座って休憩することにした。
平日の午前中。
公園はがらんとしている。
ベンチを見つけて、腰を下ろした。
「痛ててててっ」
腰に手を当ててさすってみる。
足もクタクタだ。
ほんの少し歩いただけなのに。
でも。
ただ座っているのも、ひまなのよね……。
私はいつも持ち歩く手帳に挟んだ、宝物を取り出した。
優大の写真。
素敵な瞳ね。
いつもそう思う。
それに、誰かに似ているって気がしてたまらない。
誰かが、誰なのか。
まだ思い出せずにいるけれど。
「のどに刺さった魚の小骨みたいね」
つい、写真に話しかけてしまう。