ここ最近、日向の部屋で過ごすことが多かったから。
今日、ひとりで外出しているなんて、変な気分だった。
お琴のお稽古が終わり、お友だちとお茶をしている。
午後3時。
「ねぇ、二丁目の早川さんのこと知ってる?救急車で運ばれたそうよー」
熱いコーヒーを飲みながら、湯浅さんは言う。
「それ、知ってる。ちょうどその日に、早川さんの息子さんが訪ねてらしたのよ。命の恩人よねー。熱中症だったらしいわよ」
「テレビで言ってたけれど、室内でも熱中症になるんだってねー」
湯浅さんのふった話に、みんな次々に体を乗り出して返事をしている。
私は、黙ってコーヒーを飲んでいた。
「あら、幸村さん」
噂好きの湯浅さんが私を見つめたので、少しだけ身構える。