よくわからない。 とにかく悔しくて悲しかった。
 あの邸にいたくなかった。

 だから森を抜けた先のジェイの邸へと走ったのだ。
 ジェイの足は早く、姿はもう見えない。

「ジェイ、待って下さい!」

 息が切れそうになりながら彼の名を呼んだ。
 女の足では彼に追いつくのは大変だ、これが追い掛けっこなら確実にジェイが余裕で勝利だろう。

 森の、ビアンカを拾った辺りまで走って来たところでようやく追いついた。

 ジェイは初めて会った時同様に木の根元付近で足を投げ出して座り込んでいた。