確かにジェイの服の所々に解れや汚れがあり、靴も磨かれた様子はない。
 執事がいるのにも関わらず、貴族として最低限の身なりはしていないのだ。
 誰が見ても成り上がりの貴族で、どうせ元平民だろうと敬遠するのもわかる。

 それでも私にはわからない。
 ジェイに漂う上品さが誰の目にも見えていないなんて。 まるで曇り硝子越しで対しているようだ。
 そんな彼の、一人取り残された姿が心に残って無性に泣きたくなる。

「私、ジェイを送って来るわ」

「そんな勝手な事をなさってはロナウド様がお可哀想です」

「もう会えないかもしれないの。 少しだけ話をしてくるわ」

 ロージーの手を振り払って外に飛び出した。