「せっかくだからビアンカも連れて行くよ。 君との大切な思い出だ」

「ジェイ……会えないなんて……」

 ドレスを手でギュッと摘まんだ。

「ロナウドには君から伝えておいてくれないか?」

「何と伝えれば……」

 俯いた顔を上げればきっと、いつものジェイの微笑みが見える。
 なのに今は見たくない、寂しいだなんて感じたら。

「リリィお姉様?」

 居間で待ちくたびれたのか、ロージーが玄関ドアから顔を覗かせる。

「お姉様、どうなさったの?」

「ロージー、こちらはロナウドのご友人のジェイ様よ」

 私の紹介を受けて、彼がお辞儀をする。
 それは貴族らしい貴族の態度そのものだ。

「ロナウド様の?」

 なのにロージーの顔が、執事や他の使用人同様のような気がするのはどうしてだろうか。

「あの……子爵家の次女、リリィお姉様の妹でロージーと申します」

「貴方がロージー嬢ですか、ロナウドから聞いていますよ。 いや、聞かされたと言った方が正解かな」

「何をお聞きになりましたの?」

「別に。 美しいのだ、とね」