あれからもう何度も森を抜けて往復している。

 少しずつビアンカが元気になり、うっすら目が開いてきた。
 ビアンカ、と声を掛けるとか細い声で鳴くのが可愛くて何度も呼び掛けてしまう。
その度にジェイにしつこいと笑われてしまう。

 邸にはシェフと執事、女中のみで、それ以外は一人もいないらしい。
 ジェイは私の持参するおやつをとても喜んでくれる。 シェフの作るケーキだってとびきりの美味しさだというのに。

 彼の執事は初老で、子供の頃からのつき合いだそうだ。
 年下の主人に対し、いつも恭しく接しているのが印象的で、まるでそうするのが当然という態度。
 そして私に対しても同様で、それがどこか懐かしく感じてしまうのだ。