この邸は大きくなく、使用人も執事と料理人、女中の他は数人のみ。 侍女は子爵家から一人を連れて来ただけ。

 当時、ロナウドの婚約者になったばかりの私を皆は受け入れてくれていた。
『リリィ様が夫人になられるのが待ち遠しいです』

 昏睡から目覚めて男爵家に戻って来た私を驚きの表情ながらも歓迎してくれたのが嬉しかった。
 どれだけ月日が戸惑わせても、きっとこうして待っていてくれる人達がいたのだと思うと、空白の時間はすぐにでも取り戻せるような気がした。
 そしてロナウドの婚約者として、妻になるべく努力すれば大丈夫なのだと思えた。 時間は掛かったとしても。