すぐに医師とお父様、お母様が部屋に飛び込んで来た時の、皆の表情を失くした顔は印象的だった。
 誰も何も発せず、ただ寝台を囲むようにして黙って立ち尽くすのみ。

 それは喜びより、寝台に横たわって目蓋を閉じたままだった私が突然目覚めている光景を目の当たりにした衝撃の方が勝ったせいに思われる。

 そんな空気をロージーが壊した。

「お母様」

 静かな、その声にハッとしたお母様は寝台のすぐ側に跪き、ようやく冷静さを取り戻す。

「リリィ……」

「おはようございます……お母様」

 目覚めた時から普通に喋っているつもりなのに、眠り続けた影響なのか掠れ声しか出て来ない。

「夫人、まずはリリィお嬢様を診ましょう」

 医師はそう言い、お母様とロージーだけがその場に残り、お父様とロナウドは部屋を出て行った。
 お父様がロナウドの肩にポンと手を置いて慰める姿を目に留めながら。