「お父様には感謝しています。 ロナウドの婚約者に決まった時、とても嬉しかったから。 叶わぬ結果にはなりましたが、それでも味わった幸せは確かに私の心に存在します」

「リリィ、忘れないでくれ。 お前はこれからも私達の娘だ」

 その両手は大きく、お母様に叱られて泣いた後で頭を優しく撫でてくれた温かみを思い出させてくれる。

「お父様、侍女は一緒に連れて行きます。 許して下さいますか?」

 侍女は私の侍女になる前のその昔、彼女の祖母の影響から私の未来を見たらしい。
 それは寝台でひたすらに眠り続ける私の孤独な時。 こんなにも孤独に愛を求める気持ちがわからなくて、そこから今に至るのだそうだ。

「ロージー、元気でね」

 お父様、お母様の隣で一人咽び泣く妹。
 いつまでも小さな可愛い子、私の後を追い掛けて泣いていたロージーはやはり今も変わらない。