翌日、いつもと変わらない春日の姿があった。


「おはよう、花ちゃん!」


「あっ、えっと……おはよう……」


「元気ないね、どうしたの?」


「なんでもない……」


「安井先輩とケンカでもしたの?」


「……」


 自分の席で椅子に座っていた私は、顔を上げて春日を見た。

 いつもと変わらない、可愛い笑顔。

 同級生の男子から人気があって、同姓からも好かれる優しくて温厚な性格。

 普段通りの春日を見て、私は胸を撫で下ろす。


「昨日はゴメン……その……」


 気まずくて言い出せない、春日に黙って先輩とつき合ってしまったこと。

 春日と別れた直後だって分かってたけど、私も中学生の時から安井先輩を好きだったし。

 彼女がいると知ってても、ずっと片思いでいた私に……


 先輩のほうから、つき合って、と言われたら……


「花田 鈴はいないのか!」


「あっ、はい……」


「いるなら返事をしろ!」


「すいません」


 ぼーっ、として考え事をしてたら、先生に怒られてしまった。

 目の前に春日の姿はなく、いつのまにか朝のホームルームが始まってる。



 最近、毎朝こんな感じで過ごすことが多くなってきた……