「琴美19時だ分かったな」

 「分かりません、秘書だからと女性が行くところではありませんよ」

 私はイヤな顔を社長に向ける。
 武藤さんが行けばいいのに。

 「どうして武藤さんではダメなのですか?」

 「私はフランス語は出来ません」

 「意味が分からない、クーキ社長は日本人でしょう?」


 「クーキ社長がフランスのお客様をお連れするのです。それで高倉社長に通訳が必要、だから鈴木さんが絶対必要なんです」


 通訳?私はもう呆気に取られて言葉も出ない。

 いけない、ハッキリ言わないと。
 
 「通訳?私には出来ません、ましてフランス語なんて無理です。今すぐプロにお願いして下さい」


 私は声を大にして社長に言った。