……あの日。

校内に植っている桜の花が散った頃。

オレはさやかちゃんと初めて会った。




昼休みだった。


浩人や他の友達と中庭で話していたら、友達の中学時代の後輩と名乗るやつが近寄ってきた。


しばらくその後輩くんと友達が話しているのを聞いていたけれど、オレはひとり、購買まで行くことにした。


購買に着くと、女の子がひとりで商品をじっくり見ていた。


オレは買いたかった板状のガムのセットに手を伸ばす。

6枚の板状のガムが1セットで売ってる。

結構好きなんだよなぁ、このミント味。



女の子は「あっ」と小さな声を出した。

鈴が鳴ったような、可憐な声だった。





「あ、コレ、買いますか?」
オレは女の子に手にしたガムを見せた。

もうこの1つしか残ってない。


「え、いえ、買いません」
女の子はニコリともせず、すぐに購買から去って行った。



オレはガムを買って、女の子を追いかけた。



すぐに追いついて、
「ねぇ!」
と声をかけ、ガムを差し出す。



振り返った女の子は、
「大丈夫ですから」
と言ったものの、ガムをじっと見ていた。