「で?さやかちゃんと話した?」


「いや、挨拶したくらい……、いや、した内に入るのかも微妙だけど」


浩人は、
「何だよそれ」
と言って大袈裟にズッコケる仕草をした。












「歩ってさ、何であの子のことが好きなわけ?」

放課後。
教室でダラダラと浩人の持って来ていた漫画雑誌を読んでいた時。

ふいに浩人が聞いてきた。


「え?」

オレはわざと漫画雑誌から目を離さず、俯いたまま聞き返した。

「春だっけ?多分入学式のすぐ後だったよな?歩がさやかちゃんのこと好きだってオレに教えてくれたの」

バシャバシャ!

何の音かと思って、顔を上げた。

浩人が購買で買ってきたいちごミルク味のジュースのパックを、何故か上下に振っている音だった。

それ、果肉入ってないから。
振っても意味の無い飲み物だよ。

教えようかと思ったけど、面白いからそのまま見ていよう。

浩人はまだジュースを上下に振りながら、何食わぬ顔で話し続ける。


「可愛い子だよ?可愛いけどさー、歩って可愛い子に興味無さそうじゃん?」


「……そんな事ないし」


思わず返事してしまった。



「オレは知ってるぞ。中学ン時、学年イチの美女に告白されたくせに、お前振ってたもんな!丁重にお断りしてたもんな!」