「大変そうだよな」

オレは視力もいいし、メガネを日頃はかけない。

まぁ、どこかに遊びに行く時には伊達メガネをかけたりもするけど……。
マスク必須の世の中になってからは、伊達メガネの出番は激減した。


「でもオレ、メガネが好き」
浩人はメガネ拭きをしまって、ゆっくりとメガネをかけた。


「うん。似合ってるよ」

本当にそう思っているから言ったんだけど、
「お前はオレの彼氏か!」
と浩人は大爆笑して、またメガネを拭くはめになった。






「さやかちゃんと会った」

オレは浩人にだけ聞こえるように、小声で伝えた。


浩人は再びメガネをかけながら、
「おおっ!」
と嬉しそうな表情を見せてくれた。


その事が少し嬉しい。


「……何、何で笑ってんの?」
浩人がオレに聞く。

「は?いや、笑ってないかもしれないじゃん。マスクで口元隠れてますよね」

照れ隠しで口調が変わる。


「もうマスク生活にも慣れてきたら、表情の変化くらい分かるし。目が笑ってんだよ」

浩人の言う通りだった。

マスクをしていると表情が分かりづらいけれど、口元が見られない分、目で表情を読み取るようになってきた。


だけど、オレの嬉しかった出来事を聞いて、浩人が喜んでくれたみたいだから嬉しい、なんて言えない。


それはさすがに恥ずかしすぎる。