泣き続けるさやかちゃん。


思わず、抱きしめてあげたいって思った。



ぎゅっと抱きしめて、大丈夫だよって言ってあげたい。






オレは右手をさやかちゃんの肩に伸ばした。




震える、小さな肩。




もう少しで触れるというところで、オレは右手をぎゅっと握りしめる。



さやかちゃんから一歩だけ、オレは離れた。






「さやかちゃん」



オレをまっすぐに見るさやかちゃん。

涙でマスクも濡れている。





「ぎゅっと抱きしめてもいい?心の中で」






さやかちゃんが頷いたのか、俯いただけなのか、オレには分からなかった。



でも。






オレは心の中で、さやかちゃんをぎゅっと抱きしめた。





大丈夫だよ。


さやかちゃんなら頑張れる。




……大好きだよ。







さやかちゃんには届かないかもしれないけれど。


それでもいいんだ。







公園に設置されている外灯がポツポツとともり始めた。



次第に落ち着いてきたさやかちゃんが、
「先パイ、帰りましょう」
と呟いた。





駅まで。


何にも話さなかった。


黙ったまま、ふたりで駅のホームに立つ。