「困る」って……。


その言葉がオレの視界を暗くしていく。



「困るよ、だって私……」

さやかちゃんは泣きじゃくりながら、
「私、明日この町からいなくなるのに……」
と続けた。




いなくなる?



「さやかちゃん、どういうこと?」



「おと、お父さんが……仕事クビになっちゃって……」


さやかちゃんは俯いた。


「もう生活が苦しいから、……お父さんの実家、おじいちゃんの家に、引っ越すの。それでおじいちゃんの仕事を手伝うって……」



思いもしなかった話に、オレは何も言えない。




「私なんて、全然大人じゃない」


悔しそうな声でさやかちゃんは言う。


「不安で不安でたまらないの……」






さやかちゃんは今日、オレとの約束の「半分っこ」をくれた時。


「今日の内に」って言っていた。


いつもならつれない態度なのに、デートだってしてくれた。



明日には、オレの前からいなくなるからなんだ……?