昨日、あなたに恋をした

「死ぬときにも、それをつかんでいたいかどうかまで考えたら、物が捨てられるそうですよ」

 東城は手を払って立ち上がると、日子を見下ろす。

「極端だな。
 そもそも死ぬときまでつかんでいたいものなんてあるのか」

と言ったあとで、
「ああ、……あるかな」
と言う。

「えっ?
 なんですかっ?」
と日子は身を乗り出し訊いた。

 自分はちょっと思い浮かばなかったからだ。

 誠孝にそう聞いたとき、パッと浮かんだのは、何故か、部屋でいつも紅茶を飲んでいるコップだった。

 手にしている時間が長いのと。

 疲れたときは、それをつかんだまま、行き倒れそうになっているからだろうか。

「誰に聞いたんだ、そんな話。
 テレビとかでやってる怪しい片付け番組か」

「いえいえ。
 仕事で付き合いのある人に聞いたんです」

「お前は、仕事関係の人間に、いちいち、家が汚いです、と言って歩くのか」

「……言うわけないじゃないですか。
 この間のシゲタカさんですよ」

「ああ、お前が連れ込んだ、どっかのゲーマー」

 いや、めっちゃ話がねじ曲がってますよ、先輩。