昨日、あなたに恋をした

「こっち側にもオールがついてればよかったんですけどっ」

 いやそれ、助けになるのか? という顔を誠孝はする。

「なんかお前、向かい合って座ってるのに、俺と同じように漕いで、ボートを動かなくしそうだぞっ」

 言い合う声もよく聞こえないぐらい雨の音だ。

「しっ、誠孝さんっ、あと少しで岸ですっ」

 他のボートも一生懸命岸に向かって漕いでいる。

 途中で、他のボートのカップルと目が合った。

 大変なことになりましたねっ。

 頑張りましょうっ、と目と目で会話し合う。

 妙な連帯感が生まれていた。

「なんか、ほんとに奴隷船みたいになってきた……」
と誠孝が呟いた瞬間、日子も叫んでいた。

「すみませんっ。
 私が奴隷船に乗りたいと言ったばっかりにっ」

 この会話が雨音で近くのボートの人に聞こえなかったのは幸いだっただろう。