金曜日。
「いよいよ、週末ですね。
ドキドキしますね」
と言いながら、部屋で荷物を詰めている日子を誠孝は眺めていた。
あのあと、日子は覚悟を決めたような顔で電話をしていたが、母親は電話に出なかった。
怒っているのだろうかと日子は青くなっていたが、果敢に電話をかけ続け、ようやく母親が電話に出た。
「なによ、うるさいわね。
今、美容院に来てるのよ」
どうでも良さそう言う母親に、日子は、
「お母さん、怒ってるの?」
と訊いていた。
「なにをよ?
別にいいわよ、次の土日で」
ただ単に、週末暇なら、日子に業務用スーパーに乗せてって欲しかったのだと言う。
運転手が高道だと、早くしろと急かされて、ゆっくり買えないので、日子に頼みたかったらしい。
「もう~、いちいちうるさいわね、今、忙しいんだからっ」
いや、忙しいのは、美容師さんでは……と漏れ聞こえる声に思いながらも、誠孝もホッとしていた。
別に二人で旅行に行くことを怒っていたわけではないとわかったからだ。



