「やっぱり無理です。
もう無理です」
母親は、ふーん、とだけ言って、電話を切ってしまった。
日子はスマホを握ってうなだれる。
特に駄目だとは言われなかったが、あの、ふーんが気になる、ふーんがっ、と日子は焦っていた。
だが横から、カッター訓練のときの先生たちのように、誠孝が励ましてくる。
「なにが無理だ、諦めるなっ。
ていうか、お前はどれだけ真っ直ぐに育ってるんだ。
なに素直に親に話してるんだっ。
……いや、話してもいいんだが」
誠孝の言葉が半分しか頭に入ってこないまま、日子は手にしているスマホとパンフレットを見つめ、呟いた。
「世間的に見たら、おかしいですかね?
付き合ってもないのに二人で旅行に行くなんて」



