昨日、あなたに恋をした

 いや、あれ、ほぼ奴隷船でしたよ。

 炎天下でみんなで息を合わせて死にそうになりながら漕ぎましたよ、と日子は思い出す。

 そもそもカッター訓練は旧日本海軍が訓練でやってたものらしいが、確かに今でも軍隊っぽい、と日子は思っていた。

 まあ、湖畔に浮かんでいるのは、カップルや家族で、うふふ、あははと楽しく漕ぐボートで、軍隊で奴隷船なカッターボートではなかったのだが。

 日子の中では、人力で漕いで進む水上の乗り物、として、ボートもカッターボートも一括(ひとくく)りになっていた。

 緑滴る森に囲まれた湖でボートを楽しむ人々の写真を見ながら、日子は微笑んだ。

「でも、これは楽しそうですね」
「奴隷船なのに?」

 そんなしょうもない会話をしていたとき、日子のスマホに母親から電話がかかってきた。

「あんた、来週、暇?」
といきなり訊かれる。