昨日、あなたに恋をした

「い、今のは……」

「お雛様だろう」

「今、五月ですよっ?」

「だから片付けろって言うんだろう」

 冷静に誠孝が言う。

 そうか……。
 そうだな、と日子もようやく落ち着きを取り戻した。

 そういえば、おばあちゃんは娘や孫や姪っ子たちがいらなくなったお雛様をもったいないからと全部引き取って。

 暇な年はすべて並べて飾ってるんだった、と思い出す。

 出したはいいが、片付けるのが面倒くさくなって放置していたようだった。

「お雛様、お雛様ですよね」
と当たり前のことを口の中で繰り返す。

 自らに言い聞かせるように。

 今、お雛様たちが見下(みくだ)すように見下(みお)ろしていた気がしたが、ただの妄想だろう。

 日子はもう一度、襖を開け、電気をつけた。

 明るい中で見ると、ずらりと並んだ七段飾りは壮観で、うっとりするほど綺麗だった。