昨日、あなたに恋をした

 きっと我々が到着する前に急な用事ができて、お片付けして欲しいのはここよ、という意味で、はっていったんだろうな。

 まったくおばあちゃんったら、と思いながら、日子はガラリと襖を開けた。

 ひゃーっ、と中庭のカメも驚いて首をもたげそうな悲鳴を上げる。

「大丈夫か、日子っ」

 遅れて部屋の中を覗いた誠孝はさすがにマヌケな悲鳴を上げることはなかったが、ひっ、と息を呑んでいた。

 その部屋は昼間だと言うのに、カーテンで締め切られていた。

 だが、強い日差しが厚いカーテンを突き抜け、部屋を赤く染めている。

 何故、光が赤いかと言うと、窓の近くに置かれた幾つもの七段飾りのお雛様の緋毛氈(ひもうせん)を日差しが突き抜けているからだ。

 薄暗い部屋中に緋毛氈越しの赤い光が広がっていて、大量の無表情なお雛様が自分たちを見下ろしている。

 ……ホラーだ。

 日子は思わず、襖を閉めていた。