昨日、あなたに恋をした

「あ、ありがとうございます」

 頭を下げたあとも目で追っていると、向かいの電車に乗るのが見えた。

 彼は今来た方角に戻っていったようだった。

 えっ?
 もしかして、今の一言を言うために、早朝、電車に?

 香椎は彼の乗った電車の方をいつまでも見ていたが。

 ふいに背後から視線を感じた。

 誰っ? と振り向いたが、こちらを見ている人間は誰もいない。

 だが、視線をそらすと、また、刺すような視線を感じる。

 ええっ? なにっ? 怖いんですけどっ、と香椎は怯えながら電車に揺られていた。