「あ、沙知見さん、お疲れ様です~」
帰宅して、乗ろうとしたエレベーターに日子が乗っていた。
ひょいと階数ボタンの辺りから顔を出し、笑う日子を見て誠孝は思う。
すごく、絶対、どうしても言いたくないし。
そんなことを言う男が周りにいたら、鼻で笑う自信があるのだが。
今、『森を歩いていたら、いきなり木の陰から妖精が現れた』みたいに思ってしまった……。
日子に会えて嬉しかったからそんな風に思ってしまったわけではない。
それじゃ、俺が日子に夢中みたいじゃないか。
あんな……
あんな……
あんな……
日子の悪い点を言いつのろうとして、誠孝は困る。
思い浮かばなかったからだ。



