昨日、あなたに恋をした




 一度、部屋に戻った日子は、ウロウロしていた。
 十五分後まですることもなく、落ち着かないからだ。

 ワイン以外になにか持ってくものないかな? と日子は部屋の中を見回してみた。

 さすがに、このワインだけでは安すぎる気がしたからだ。

 キッチンで美味しいお店のクッキーを見つけたが、たまたま昨日、寝る前に袋を開けて、ひとつ食べてしまっていた。

 何故、食べてしまったんだっ。
 しかも、一枚だけとかっ。

 鼻歌まじりに袋を開けた昨日の自分を罵りたいっ、と日子は頭を抱え、またウロウロしはじめる。

 あ~、落ち着かない、と思いながら、日子はスマホで確認してみたが、さっき廊下で、じゃあな、と別れてから、まだ三分。

 二、三分でデータを差し替えろと言われたら、その短さに手が震えるのに。

 今は、その二、三分をものすごく長く感じる。

 ……せめてワインをラッピングしてみるか。

 いや、それ以前に、化粧でも直してみるか。

 でも、さっき、すでにこの状態で会っちゃってるもんな~。

 家帰って着替えてなかったから、服はこのままでいいとして。

 ……やっぱり、ワインをラッピングするか、と日子はガサガサ袋を探し出した。

 前、友だちがワインを持ってきてくれたときのワイン用の紙袋があったはずだからだ。

 パントリーの片隅に立ててあったその袋を発見し、入れてみた。

 ……安いワインなのに、包装だけ立派になってしまった。

 高級感あふれる、少し光沢のあるチャコールグレーの紙袋から覗いた、ペットボトルの赤いフタ部分を日子は見つめる。