昨日、あなたに恋をした

 


 鼻歌を歌いながら、日子が部屋から出ると、誠孝が立っていた。

「おはよう」

 日子はガシャンッと鍵を落としてしまう。

 朝、偶然出会うことは今までにもあったが。
 今の誠孝は完全に日子を待っていた感じだったからだ。

 ……ど、どうしたんですか、沙知見さん。

 まさか一晩経って、あの料理、やはりまずかった、と思い、駄目出しを?

 それかお腹を壊されたとか?
とその厳しい顔つきに怯えながらも、

「お、おはようございます」
と日子が挨拶すると、

「じゃあ、行こうか」
と誠孝は言う。

「え、あ、はい?」

 小首を傾げながら日子が後をついていくと、誠孝は油断なく周囲を窺いながら呟いた。

「……何処に誰が潜んでいるかわからないからな」

 何処にっ?

 誰がっ?

 一体、なんのためにっ!?
と緊張する日子は、昨夜のコメントのことは忘れていた。

 嫌なことがあっても、ずっと考え続けていると、仕事に支障が出るので、すぐに切り替える癖をつけていたからだ。