「どうした、日子。
渋い顔をして」
エレベーターに乗った日子は誠孝にそう問われる。
お片づけも終わったし、もうあんまり会う機会なくなるかな、と思っていた誠孝と偶然出会えて、嬉しかったのだが。
東城の噂話がずっと引っかかっていた。
「いや~、東城先輩のことでちょっと。
ああ、そうだ。
新ちゃんとランチされたんですね、沙知見さん」
「職場でバッタリ出会ってな」
そう誠孝は教えてくれる。
沙知見さんは親切だな、と日子は思っていた。
新ちゃんこと、ベルゼブブ新太は、頭は良いのだが。
良すぎるせいか、話が右に左に飛んでいって、こちらが訊きたいことに答えてくれたことがないのだ。
沙知見さんは頭いいのに、仕事のときでも、我々凡人にもわかるように筋道立てて話してくれるからなあ。
だから、まるきり敵だったときも、実はちょっぴり感謝していた。



