「あの世にまで持っていきたいものはこの部屋の中にあるか」
「ありません」
「明日いるものはこの部屋の中にあるか」
「あります」
「では、それをつかめ」
と誠孝に言われ、日子はバッグをとり、化粧品をとり、少し考えて、明日着ていく服をとった。
「よし、それらを退けろ。
あとはすべて捨てるくらいの気構えで行け」
と言われ、ひっ、と日子は固まる。
「あ、あさって着ていく服がありませんっ」
「よし、それを取ってこい」
はいっ、と日子は駆け出す。
「そういえば、着て寝るものがありませんっ」
「よし、取ってこいっ」
「はいっ」
お片付けを習う先生と生徒というより、犬と飼い主のような様相を呈してきた。



