昨日、あなたに恋をした

 そのとき、部屋のチャイムが鳴った。

 インターフォンを覗くと、誠孝だった。

「はい」
と玄関を開けて、驚かれる。

 普段は着ないジャージを着ていたからのようだった。

「どうした。
 やる気満々だな」

「はい、格好だけ」

「なにも進んでないんだろう」

「一応、片付けてはいるんですが。
 なにをどうしたらいいのかわからないんですよ。

 公式を覚えないまま数学のテストに(いど)んで、テストの時間中に公式を一から作っている気持ちです」

「その公式を持ってきてやったから入れろ」

 腕組みして、こちらを見ながら誠孝は言う。

 汚い部屋を見せたくないと言っていたからだろう。

 確かに彼は最強の(すけ)っ人となるだろう……。

 だが、ボロボロに疲れながらも、まだ恥じらう心が日子にはあった。

「あ、あの、では、ちょっと目隠ししてもいいですか?」

「俺に手探りで片付けろと言うのか。
 第一、目隠し、なにでするんだ。

 タオルかなにかか、誘拐犯か。
 お前の手でするのか、その方が恥ずかしいだろうが」
と一気に畳みかけるように言われ、仕事で言い負かされるときみたいだな、と日子は思った。