昨日、あなたに恋をした

 


 ついにこのときが来た……。

 土曜の朝、日子は大量のゴミ袋とビニール紐を手に、部屋の真ん中で仁王立ちになっていた。

 昨日の夜、ザックリ掃除はした。

 あとはこの、何処へどうしまったらいいのかもわからないものを捨てるか。

 何処かに突っ込むだけだ!

 何処かに……。

 雑然とした部屋を見回した日子はまだなにもしていないのに、すべてを放棄しようかと思うくらい疲れてしまう。

 仕事と同じ要領で、この量の荷物を何処かにしまったり捨てたりするのにかかる労力と時間を正確にシミュレートしてしまったからだ。

 ……未来を(うれ)いても仕方がないと言うではないか。

 絶望の中にも光はあると言うし、
と思考がおかしな方向に壮大になりながら、黙々と片付けていたが。

 ふと見上げた窓から見えた空が青く。

 どこからか楽しげな家族の笑い声が聞こえてきたとき、張りつめていたものが、ぷつっと切れた。

 この無惨な部屋の外には素晴らしい世界があるようだ……。

 ふらふらと窓辺に行った日子の視界に近くのマンションが入った。

 あのマンション、買ってこよう。

 そして、一からやり直そう。

 いや、ここは沙知見さんや東城先輩もいる、いいマンションだから、あっちを物置にしよう、と財布をつかみそうになる。

 マンションを借りるのにまず必要なのは、財布よりも、印鑑とか住民票とかなのだが。