「お世話になりました。
ありがとうございました」
と日子は玄関先で深々と頭を下げた。
帰って着替えてから出社するのだ。
だが、日子が誠孝の部屋から出たとき、日子の部屋の隣の中野さん夫婦も出てきてしまった。
……早朝、男の人の部屋から出てくるところを見られてしまいましたよ、と焦りながらも日子は、
「お、おはようございますっ」
と中野さん夫婦に頭を下げる。
仲良くご夫婦でウォーキングに行くところだったらしい老夫婦は笑顔で、日子と誠孝に挨拶してきた。
誠孝も頭を下げる。
日子は誠孝を振り向き、もうエレベーターに向かっている中野さんご夫妻にも聞こえるように言った。



