昨日、あなたに恋をした

「オレンジよりは腹に溜まりそうなものもある。
 十分したら来い」

 この間より時間短くなってるな、と思っている間に、誠孝は返事も聞かずに部屋に入っていってしまう。

 日子はパタンと閉まった扉を見ながら、その向こうに広がる、緊張するが、美しくいい香りのする空間を思う。

 それにしても、面倒見のいい人だな。

 っていうか、日子って……

 え?

 日子って?
とひとりになり、改めて日子は驚いた。

 そういえば、沙知見さんって今まで、私のこと、なんて呼んでったっけ?
と思い返してみたが。

 職場でもこのマンションでも、名前も名字も呼ばれたことはなかった……。