この事によって、一也は彼氏と言う言葉は出さなくなったので、
罪悪感を感じながらも、志穂はホッとしていた。


最近の志穂は、一馬に逢えない寂しさが辛くて、お酒に逃げる毎日。


お酒を呑まなければ、眠れないほどに…。


そんな志穂を心配してくれていたのは、一馬ではなく一也。



この日、いつもの様に家に帰って、志穂はお酒を呑んでいた。


缶ビールを二本ほど空けた頃、志穂の大好きなアーティストの着ボイスが携帯から聞こえてくる。


”電話が鳴ってるぞ、早く出ろよ”


着ボイスはなかなか止まらず、志穂はテーブルの上の携帯に手を伸ばす。


『はい…、もしもし…』


だるそうな低い声で、志穂は電話に出た。


「また、一人寂しく宅呑みかよ。
下に居るから出て来いよ」