「なんで。なんで零次じゃなくて、あんたが生きてんだよ!」
声が枯れる勢いで泣き叫んだ。
八つ当たりも当然だとわかっていても、叫ばずにはいられなかった。
零次が身投げをしたのは、こいつだけのせいじゃない。零次が俺を頼れなかったのも、身投げをした理由のうちの一つだ。
それでも少なくともこいつが零次に俺の動画を撮るように言わなければ、零次があんなに追い込まれることにはならなかったハズだ。いや、そもそもこいつが零次を監禁しなかったら……。
過去は変えられない。そうわかっていても、嘆かずにはいられなかった。
「なんで? あいつが悪魔だからだよ。お前は自分を救ってくれたあいつを神様みたいに思っているかもしれねえが、俺からすれば、あいつは俺の幸せを奪った悪魔でしかねえ」
「なっ!」
息子のことを悪魔と言うなんて、本当にどうかしている!
「俺はあいつがいなければ、妻と離婚をすることも、あいつの母親を殺すこともなかったんだ。それなのにあいつを悪魔と言わないでなんと言う?」
「ふざけんな! そんなのただの責任転換だ! あいつはなんも悪いことはしてねえ!」
俺の胸ぐらを掴んで、零次の父親は言う。
「海里、知らねえようだから教えてやる。お前が言ってることは ただの綺麗事だ。この世にはな、そんな綺麗事では片付かない私情が、たくさんあるんだよ」
心臓を毒針で貫かれたみたいだった。
「あんたが、俺を海里って呼ぶな!!」
零次の父親の手を振り解いて、俺は叫んだ。
「あんたの事情なんて知ったこっちゃねえんだよ! あんたは言ったよな、あいつはクズだって、生きる価値がないって! そっくりそのまま返してやるよ! あんなことをしたあんたの方がよっぽどクズだ! あんたがあいつを、自殺に追いやったんだよ!」
涙を流しながら叫ぶ。
俺は零次と一緒なら、どんなことがあっても耐えられると思っていた。それなのにこいつが俺の知らないとこで零次を傷つけて、自殺に追いやった。
こいつが俺から、零次を奪ったんだ。
「そりゃあ光栄だな」
光栄?
零次を自殺させることができて光栄だって、そう言ったのか?
思わず胸ぐらから手を離して、零次の父親と距離をとるように後ろに下がる。
嗚呼。
この男は壊れている。恐ろしいくらいに。



