何で、サクラはオンセンというものを知っているのだろう?
「温泉わね、美肌効果抜群で、疲労回復にも効果があるって言われているのよ。この、島の温泉はきっと神様が与えてくれた凄い温泉なのよ」
 ベラベラと喋りながら、サクラは荷物を置いて。
 服を脱ぎ始めた。
「何で、服脱いでるの!?」
 悲鳴まじりに言うと、サクラは「は?」と睨んだ。
 服を脱ぎ捨てたサクラは、裸の状態で私をじっと見る。
「温泉に入るのに、服を着て入る必用なんてないでしょ」
「え、何で、この臭い池に入らなきゃいけないの!?」
「臭い池じゃなくて、温泉だから!!! 言っておくけど、カレン」
 サクラは人差し指をこっちに向けた。
「私と一緒に入るのが嫌っていうのは、私のことをオンナとして見てないと肯定していることになるんだからね」
「そんなの無茶苦茶じゃない?」
 女とか男とかそれ以前に、言われて今、気づいたことだ。
「それに…、失礼に値するから言わないでおいたけど。カレン、結構匂ってんだからね」
「・・・え?」

 旅が始まってからずっと、シャワーを浴びることなんて一度もない。
 濡れたタオルで身体を拭く程度だった。
 遠まわしに、サクラに自分の身体を臭い…と言われた私は。
 ショックを受けて、言われた通り服を脱いでオンセンなるものに浸かった。
 オンセンはちょうど良い湯加減で身体がほぐれていく。

 オンセンはひょうたんの形をしているらしく、
 小さい円と大きな円がくっついた形をしているそうだ。
 私とサクラは小さい円形のほうに入り、他のメンバーは大きな円形のほうにいる。
 一面、湯気が凄くて向こう側が見えないとはいえ、
 蘭たちがいると思うと、恥ずかしくなってくる。
「…クリスさんは向こう側で大丈夫なのかな」
 今は男とはいえ、女の子として生まれてきたクリスさんが男子たちと一緒で大丈夫なのかと不安になってくる。
「そういう心配は、クリスを傷つけるからやめて」
 ぴしゃりとサクラが言ったので、それ以上は追求出来なかった。

 オンセンは匂いとは裏腹に入ってしまうと心地良くて、
 一気に眠気が襲ってくる。
「良い機会だから、私の話をしてあげるわ」
 サクラの身体を見ないように目をそらしていたのに。
 目の前にサクラがいたので「ぎゃあ」と声を出してしまった。
 サクラが女だろうが男だろうが他人の身体を見ることなんて一度だってない。
 さっき、サクラが服を脱ぎ捨てたとき、全部見てしまったけど。
 …サクラはスタイル良すぎだと思ってしまった。

「私が、過去のことを話すのは一度きりだからね」
 顔に汗をかきながら、綺麗な顔をして言うサクラに、静かに頷くのだった。