きみと真夜中をぬけて







「綺」

「うん」

「なんか、……元気ない?」

「うーん…」



私が落ち込んでいるとき、悩んでいるとき、綺はなんて声をかけてくれていたっけ。

人を慰めたり悩み相談に乗ったりする機会は、友達が少ない私にはあまり縁がないことで、どう対応するのが正解なのかわからなかった。

それでも、放っておきたくもないと思う。




綺は自分のことをあまり話したがらない。昔何があったかさえも、いまだに何も教えられてはいないのだ。

綺がそれでよしとしているから、私が下手に掘り下げることでもないと認識していたから触れずにいる。



人は嘘をつく。平気じゃないのに平気なふりをする。大丈夫じゃないのに、大丈夫って言う。


綺にひとりで抱え込ませたくない。痛みを誰かと共有できたら、少しは心が軽くなるかもしれない。

助けてもらってばかりの私ではいたくなかった。
綺にもう、「大丈夫」って言わせたくなかった。