きみと真夜中をぬけて





「らーん」

「あ」



そんなこんなで今。


ヘロヘロになった杏未の手を引いてお化け屋敷を出ると、壁に寄りかかってこちらに手を振る男子生徒の姿を見つけた。


言わずもがな、綺である。


私たちが……というより杏未がお化けと闘っている間に、買い出しから帰ってきていたらしい。「藤原ちゃんもやっほー」と、綺は柔らかい笑みを浮かべていた。



「ど?お化け屋敷、結構怖かったっしょ」

「あぁ、うん。杏未が……」

「出てきて察したわ。こっちとしてはやりがいあって最高」



杏未を見て、綺がククッと喉を鳴らす。


明るいところに出たので、「蘭ちゃんも日之出くんも鬼じゃん……」と呟く杏未から手を離し、「お疲れ様」と杏未の肩をぽん、と叩くと 涙目で見つめられる。かわいいと思った。



「電話、気付かなかったごめん。スマホ学校に置いたまま買い出し行っちゃってさぁ。急遽補修する箇所があるとかでさ、俺が暇してたから抜擢された」

「受付の人に軽く聞いた」

「まあ無事会えたのでつまりこれは運命(ディスティニー)

「違うよ」

「そんな即答しないでもろて」



いつもの綺だ。

だけどここは夜でもなく、公園でもなく、昼間の学校だ。本来の学生のあるべき姿。



けれも、杏未や綺にとっての普通が私にとってはこんなにも新鮮で、それからとても、ドキドキしていた。