きみと真夜中をぬけて






「それにしてもあの人凄い震えてたけど、大丈夫かなぁ」

「ね。わかる、心配だよね」




握らされた500円玉を見つめながら呟く。


今の女の人は、あまり人混みが……というより、単純に人とコミュニケーションを取ることがあまり得意ではないように思えた。



言葉にはされなかったけれど、動揺の仕方と渡された500円から、彼女に謝罪の気持ちがあったことは十分にわかる。

ただ漠然と、少し生きづらそうだな、と思った。



「……これ、どうしたらいいかなぁ」

「謝罪金?でやつだと思うから、使っていいと思うよぉ」

「うーん……」



チュリトスは250円だった。杏未のと合わせて500円だったから、弁償だとしても倍以上のお金を貰ってしまったことになる。


ぶつかってきたのは彼女の方だけど、私も会話に夢中でちゃんと前を見ていなかったような気もするから、一概にあの女の人だけが悪い訳では無い。


この500円を使うにはなんとなく気が引けて、私はひとまずそれをそっとポケットに閉まった。