きみと真夜中をぬけて







「蘭は、だめじゃないよ。どこも、ダメなんかじゃない」




泣きそうだった。


ダメじゃない、私は、ダメじゃない。

私が長い間自分に言い聞かせて来た言葉でも、綺に言われると心に直接語り掛けられているみたいで、心臓がぎゅっとなる。



「何のことで悩んでるかは……まあ、大方友達か学校かのことかなってのは分かるけど。でもさ何に対しても、蘭がどうしたいかが大事だと思うよ。人を動かす力は、願望だと思うから」




「な?」と言いながら、シャリ…と綺が再びスイカバーをかじる。


スイカバーは比較的溶けにくいアイスだけど、下の緑の部分だけはどうも溶けやすいから先に食べるのが良い、と先週綺が言っていた。



綺はスイカバーがアイスの中で一番好きらしい。


夏にしか食べられないから、スイカバーが販売されている間はそれを食べることを生きがいにするし、販売が終了したら、来年またスイカバーを食べるために生きようと思うそうだ。