きみと真夜中をぬけて









一昨日のことになる。私のスマホに、身の覚えのない番号から電話がかかって来たのだ。




《……も、もしもし、蘭ちゃん》



杏未からだった。



私より幾分か高くてやわらかい声色。

最後に聞いたのは1年以上前のことになるけれど、記憶に残る声と変わらないそれに、胸がしめつけられた。



杏未の声は震えていた。そして、私の声もまた、情けなく震えていた。




蘭ちゃん、杏未。


その呼び方を何度懐かしんだことだろう。毎月手紙が来るたび、私は杏未の存在を避け続けた。

どうでもよいと割り切れる人だったら、きっとこんなに苦しくなかった。





割り切れなかったのは、杏未が私にとってマイやシホよりもずっとずっと大切な存在だったから。


本当は、不登校になる前に杏未に手を差し伸べてほしかったと思っていた。大切に思っていたのが自分だけではなかったと実感したかったのだと思う。