「難しいって分かってるけれど、争わなくっていい世の中になると良いよね。私は幸い争いの無い時代の国で生まれて育ったから、そう思っちゃうんだ」

そんな私の言葉にクリストフさんも、ベイルさんも魔術団長も耳を傾けてくれる。

「争いの無い国とは羨ましいですね。それはきっと幸せでしょう?」

魔術団長さんはそう言った。

「そうだね、生きやすい所ではあったんだろうと思う。色々問題があっても、戦争をしていて生きるか死ぬかの瀬戸際にいる日々でないのは、有難いことだったと今は実感してるよ」

ここに来なければ、私は自分の育った国のありがたみなんて実感出来なかった。

そして、それがどれだけ貴重なのかもわからなかったに違いない。

だから、私はここで出来ることはしっかり頑張って取り組みたいと思うようになった。

この国で出会った、優しい人々の為に。

この国が大好きで可愛らしい、隣人たちのために。

なによりこの国で生きていくと決めた自分のために、自分の力を活用するのだと。

今回の件で、より強く意識した。

「ユウ様、今回は誠にありがとうございました。無事に解決しましたが、婚約発表は王太子様が落ち着いてからにしましょう」