ここ、西の辺境の砦から王都のアジェンダまでは馬でゆっくり休憩と野営をして二日の距離らしい。

森や草原地帯や、小さな街二つ抜けた先が王都なのだとか。

私はもちろん、一人で馬には乗れないのでいろんな騎士さんと相乗りして行くことになった。

最初は団長さんと一緒に乗ることになっているので、近くにいると準備が整ったのか他の騎士さんがクリストフさんに声をかけにきた。

「団長、準備整いました!」

「よし、皆並べ!」

団長の声に、騎士の面々が並び互いに剣を合わせて声を出し、別れの挨拶をして各々、騎乗する。

私もクリストフさんにヒョイっと引っ張りあげられて、無事に騎乗した。

たくさんの人の笑顔に見送られて、私達は王都を目指して出発した。


砦を出て、順調に進むが急ぐこともないのか、最初の村からの移動の時とは違いゆっくりとした速度で移動している。

「帰りはそんなに急がなくって大丈夫なの?」

私の疑問に、ハハっと笑ってクリストフさんは答えてくれた。

「乗馬に慣れていない、黒の乙女の護送だからな。ゆっくりで構わんさ」

私たちのやり取りに、周りの騎士さん達もニコニコとしつつ頷いているので大丈夫そうだけど私は気になっていた。

「だって、ひと月離れてたらみんな家族に会いたいだろうし、そう思うとゆっくりで申し訳ないような気がしちゃって……」

つい、申し訳ない気持ちが顔に出ると近くの騎士さんが朗らかに言った。

「今回の遠征に来た騎士は独身者が多いですし、そう気になさらないでください」

確かに、周りを見れば私と同世代かちょっと上かなって年代の人が多い。

「さて、ここらで休むか。そろそろ昼時だからな」

そうして広めの草原で、一旦休憩となった。

そんなに経ってない気がしていたけれど、結構な時間走っていたらしい。

馬から降りて、私はクリストフさんの相棒で私も乗せてくれたリオンの前に立って鼻先を撫でた。